新しい朝

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新しい朝

「ああ、もううんざりや!」 アイツが閉じたドアに スニーカーを投げつけた。 「臭い!臭い!」 裂けんばかりにカーテンを開けて 窓を全開! タバコの匂いを追っ払う。 阿部野ハルカスが正面に見えた。 「高っかい家賃でこんなトコ、  住まんでもよかったんや!」 アイツが灰皿代わりに使ってた ペットボトルを蹴っ飛ばす。 『店に近くないと深夜まで  “若いモン“に技術を  教えてやられへんやろ?』 って、美容師のアイツが モットもらしいこと言うから、 越してきたのが二年前。 「技術教えてんのか、  “何“教えてんのか・・・」 さっきも偶然行った飲み屋で 女の子の肩を抱いて フザケてたこと、文句言うたら 「やかましいなあ」 サイフと携帯を手に出て行った。 そもそもここは私が借りて アイツが転がりこんできたようなもん。 「だいたい可笑しいわ、  喧嘩の度に1週間ほど  どこで何してんのやら」 そうや・・・そうなんや、 私が知ってるアイツの情報は、  (名前・同い年で来年30歳・  実家は和歌山の熊野、  ハルカス裏手の美容室に勤めてる) それくらい。 たまたまその美容室の客やった私と 付き合うようになっただけ。
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