新しい朝

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「そうや!野良猫みたいに  借り住まいしてただけ。  もう出て行こ!  新しい朝は自分で呼ばんとな」 並べへん靴にも、 放りっぱなしのビールの缶にも、 たまにチラツく女の影にも、 解放されたほうがいい。 「絶対、エエわ!!」 自分も必要な物だけ持って部屋を出た。 友達のトコへ暫く厄介になって 不動産屋へ連絡、 解約と荷物の処分を頼んだ。 最近は清掃までお金を払えば 一切手間なし。 最後の引き渡しでバイバイや! 「鉛筆1本も残さんと  スパッと処分して下さい」 そうお願いして1週間、 携帯のアドレスからアイツも消した。 明け渡しで不動産屋さんと 部屋で待ち合わせ。 鍵を開けると陽射ししかなかった。 「うん!これでええ!  最後にハルカスでも拝んでいこか」 窓を開けてベランダに出た。 柵にもたれて風に吹かれた。 足先にカサカサ・・・? 吸殻。アイツの好きな銘柄・・・。 「タバコ・・・」 アイツがタバコ片手に肩を抱いて 「なんば1の美容師になったら  ハルカス見下ろす高いマンションに  住ませたるわ!」  ・・・戯れ言。 唇噛んでも涙が溢れる。 「なんや・・・頼りない清掃やな、  何も残さんといてって  言うたのにぃ・・・」 アイツの吸殻一つに 足留めされるくらい、 未練ある女心が 悲しくて辛すぎて・・・。            ー 了 ー                       
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