負け犬と赤フード

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学校からあいつの家まで大体歩いて20分かかる。外食するなら場所はおそらく駅前のファミレスか、あるいは駅ビルの中にあるレストランか。居酒屋は…ないな。いくら母親の誕生日でもそういう家じゃないのは知っているし、あいつの家から駅までそこそこ遠い。車で行くのは確実だからアルコールは入れないはずだ。 「…だとしたら」 19時に食べ始めるとしておおよそ逆算、18時半までに学校を出なければ間に合わない。勿論、家に着いて、そのまま即車に乗る計算だ。制服からの着替えもあるだろうし、誕生日ならプレゼントを用意していることも十分考えられる。だとしたら、移動時間プラス準備や着替えで…。 「タイムリミットは…18時か」 液晶画面の時計をよく見れば、まだ放課後になったばかりだ。人によっては部活動という名の一日のクライマックス真っ最中。部活がない曜日だったら出ていても良い時間だが、例えば仮に先生に何かしらの雑用を押し付けられてまだ教室にいたとしても、何らおかしくはない。まだ許容範囲。まだ、許容範囲だ。30分。30分だけ。 頭の中ではぐるぐると嫌な予感が渦巻いて考えられる最悪のパターンをいくつもいくつも組み立てながら、決して表情には出さず。待ち合わせの友達を待っている素振りをしながら、友達でも何でもないあいつを待ち続ける。 私の目の前を、赤いパーカーが素通りしてくれるのをじっと待ち続ける。 「………」 ざわざわと人の波が寄せては返して校舎の外へと押し流されていく。     
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