負け犬と赤フード

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今からカラオケ行こうだの、どこどこのカフェのなんちゃらパフェがうんたら映えだのときゃいきゃい騒ぐメス蝿数匹。歩きスマホならぬ歩き単語帳で塾と言う名のもう一つの監獄に向かう囚人の列。同じクラスのバカとその友達数人が、箸が転んでも可笑しい年頃なのか、げらげら笑いながらどこかへ行ってしまった。ジャージを着て今からテニスだか野球だかをする気満々の奴もいれば、ジャージを着てはいるがしたくもない走り込みを強要された気怠さに満ちている奴もいる。 だけど、その悲喜交々生きた目も死んだ目も自分の意志であれ他人の意志であれ、まっすぐにどこかを見据えて歩いている。その背中に、見える色は焦燥感。 「…あれくらい、まっすぐ歩いてくれりゃ、世話ないんだけどな……」 決して取り残されまいと、誰もが『ナニカ』から逃げている。 「………ほーら、急げ急げ。急がないと食われちゃうぞ」 そうだ。急いで帰れ。わき目もふらず、まっすぐ目的地だけを見て進んでいけ。自分の人生に関係ない物に興味を抱くな。興味があるふりして言い訳するな。道草をしてはいけないよ。寄り道をしてはいけないよ。 「…悪い狼に食べられちゃうからね」 思わず頬が緩み、緩んだ口元から人より鋭い八重歯が覗いた。 ***** 「……来ない」 暫く人間観察で時間を潰しつつ、あいつが来るのを待っていたが。待てど暮らせど来る気配がない。もしかしたら見過ごしたかと一瞬期待してはみるが。流石にこの人混みであれ、あの赤いパーカーを見過ごすわけがない。 「めちゃくちゃ目立つもんな…あれ」     
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