負け犬と赤フード

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取り次ぎにと話しかけてきた男子生徒が怪訝な顔でこちらを見ている。そりゃそうだ。赤パーカーを着たあいつ、南雲とは何の接点もない。クラスも部活も委員会も違う。寧ろどうして南雲の名前を知っているのか疑わしい程、何もない。 私だけが知っている私だけの世界。 「…さっき、ノート拾って。ここのクラスの南雲って奴らしいんだけど」 「あぁ、机そこだから適当に置けばいいんじゃねぇかな?」 「ありがとう」 指された机に向かって、鞄から何もないノートを取り出して机の中に入れる。 机の奥で、アレはきちんと存在していた。 「ありがとう。じゃあな」 「…おぉ」 これ以上はダメだ。 そう判断して、そのまま教室を出て行った。 教室に南雲はいなかった。じゃあどこにいる?それとも入れ違いでちゃんと帰った?別の階段を使って降りたのか? 「…もう一回、見てみるか」 また来た道をのろのろと戻る。時折足が止まって、また歩く。入れ違いになったのならそれはそれで重畳。私は安心して家に帰る事が出来る。今日ばかりはまっすぐ家に帰らせて欲しい。いや…別に何の接点もない男子中学生の帰宅なんか気にしないで無視して帰ればいいだけなんだが。 私もまた、背後から迫っている『ナニカ』から食われまいと逃げているのだ。 「…やっぱりある!」 靴箱には、南雲の靴がキレイに鎮座していた。 「何やって…何やってんだよあいつは!」 「そこ3組の靴箱だけど?」 「っ!」 かけられた声に思わず振り返る。     
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