負け犬と赤フード

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モスグリーンのカーディガン。肩に担いだ黒いギターケース。 「なんだよ犬山か…」 声をかけてきた相手が犬山だった事に、思わず苛立ちの息が漏れた。 「なんだじゃねぇだろ。みど、ここ3組の靴箱。2組は隣」 「…分かってる」 「分かってる奴は違うクラスの靴箱のぞき込んだりしないっての。さっきもうちの教室に来たろ。いい加減こそこそすんのやめろってストーカー女」 「……」 「沈黙は肯定って事で良いですか?」 「良くない」 犬山は鼻から溜息を吐いて、 「何?南雲の奴、また寄り道してんの?」 「…靴がある。それだけだ」 取り出した携帯を見て、今度は口から溜息を吐く。 「今日おかんの誕生日とか言ってたんだけど…何やってんだよ…」 「部活でもやってんだろ?」 「今日水曜だから顧問の先生研究日でいないよ」 「じゃあ委員会」 「緑化委員会は基本朝の水やりしかやりません」 「じゃあ補習、」 「みーど」 「……」 「分かってて言うなよ」 「チッ」 「何?今日やけに尖ってない?生理でも来た?」 「あぁ?!」 「分かった分かったごめんごめん。俺が悪かった。セクハラ発言撤回する」 分かってる。 今日、南雲は部活も委員会もないし日直でもない。補習授業を受けなきゃいけない様な成績でもないし、先生との面談を控えてるわけでもない。     
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