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四年前に祖父が死んだ。文字に起こそうとして、初めて四年も経っていることに気がついた。それ程に毎日、心に祖父がいて、祖父の死がいた。
祖父の死の時経験したことを、写真を撮るような感覚で文字を用いて描写し、それを公募に出そうとした。残さねばならないという強い意志を持って書き始めた。しかし1000字ほど書いて、やめた。いや、やめたというより、やめざるを得なかったという表現がしっくりくる。執筆途中から、賞を取ってしまった時のことが気になりはじめたのだ。取らぬ狸の皮算用だと笑う人もいるだろう。しかし考えずにはいられなかったのだ。祖父の死を「ネタ」にし、お金を手に入れる自分が。ここで応募してしまえば、自分の中の大切ななにかが壊れてしまう。そう思った瞬間、一文字も書けなくなった。
そんなこんなで応募はやめたが、初めてエッセイといわれるジャンルを書けたので、これもまたいい経験になった。
それではおやすみなさい。
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