過去作)祖父について

2/2
前へ
/7ページ
次へ
  四年前に祖父が死んだ。文字に起こそうとして、初めて四年も経っていることに気がついた。それ程に毎日、心に祖父がいて、祖父の死がいた。  祖父の死の時経験したことを、写真を撮るような感覚で文字を用いて描写し、それを公募に出そうとした。残さねばならないという強い意志を持って書き始めた。しかし1000字ほど書いて、やめた。いや、やめたというより、やめざるを得なかったという表現がしっくりくる。執筆途中から、賞を取ってしまった時のことが気になりはじめたのだ。取らぬ狸の皮算用だと笑う人もいるだろう。しかし考えずにはいられなかったのだ。祖父の死を「ネタ」にし、お金を手に入れる自分が。ここで応募してしまえば、自分の中の大切ななにかが壊れてしまう。そう思った瞬間、一文字も書けなくなった。  そんなこんなで応募はやめたが、初めてエッセイといわれるジャンルを書けたので、これもまたいい経験になった。 それではおやすみなさい。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加