恋は幻

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恋は幻

 私は、流れの写真家。いつも、自分の気の向くまま、欲しい写真を探して旅をしている。今年はどこで日の出を見よう。今年は、どこで、未だ知らぬ子供の笑顔を見られるかなど。撮ってきた写真を旅先の新聞社や出版社、写真館などに売って生計を立てている。  子供も持たず、妻に先立たれた私にとっては、これらの写真は、痛くもあり、執着めいたものもある。ただ、妻と過ごした時間は、今の私の感性の大きな柱となり、まっすぐに前を向かせてくれるのだ。何も、もう惑うことなどないと。  そんな、私が、恋をするなんて、今になって動揺している。この関係を妻ならどういう答えを出してくれるのかと。
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