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神前ではお静かに
年が明けたとなれば初詣である。
この時ばかりは津々浦々の神社に人々が押し寄せ、取り分け著名な場所は大混雑となった。
参拝客からの『ご祝儀』を見込んでか、境内前の参道に沿うようにして多くの屋台が軒を連ねる。
焼そば、甘酒、牛串焼き。
温かで食欲をそそる湯気があちこちで立ち上る。
そんな中で、一際注目を集めたのが大道芸人だ。
彼は音楽に動きを合わせ、しなやかに四肢を使役することで、掌中にある拳大の水晶玉を巧みに操ってみせた。
まるで体と玉を一体化させたようなパフォーマンスは、子供のみならず多くの大人たちを魅了した。
彼の指先で、玉が意思を宿したように踊る。
右の掌からスルリと手の甲に乗り、緩やかに助走をつけて腕を伝うと、たちどころに頭上までかけ上がった。
そのまま勢いは衰えることなく、跳ねた。
玉は男の傍から離れて宙を泳ぐ。
見物客は『アアッ!』という悲鳴にも似た声をあげるが、すぐに安堵のものへと変わる。
男が左腕を伸ばし、待ち受けていたかのようにして指先で捕らえたからだ。
それからもお披露目は続く。
余りにも見事な技の数々は群衆から日常を忘れさせ、やがて街の喧騒すらも遠ざけた。
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