第10章 俺だけの物語

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 すると、母さんは思いだしたように何かを取りだした。 「そうだ、これ。先生から頂いたんだけど、発見したとき悠斗が持っていた物ですって。何かの手紙かな?」  母さんの手に握られている物を見て思いだした。サナが別れる間際、俺に私てくれた紙だ。  あのときは余裕がなかったからはっきりと見ていなかったが、それは確かに手紙になっていた。サナからのメッセージか何かか?  でも……あんな短期間で書けるわけもないし、もとから渡そうとしていた奴なのだろうか。 「そうだ、悠斗。何か、買ってこようか? 何か飲みたい物ある? それとも食べたい? 一階にある売店でなんでも売ってるよ」 「えっと、じゃあ、頼もうかな……なんでもいいや」 「わかった。悠斗が好きそうな物買ってきてあげるから」  母さんはここのところ、仕事にも熱が入っていなかったようで、俺が発見されてからはずっと仕事も休んで俺の隣でいてくれているらしい。  とにかく、早く元気にならなくちゃな。  そう思いつつ、母さんからもらった手紙に目を向けた。随分と古臭い紙でできており、封筒になっている。それを特に考えもせず、ただ開けてみた。  中に二枚の紙が入っており、それを取りだし広げる。それを見て俺は手が止まった。     
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