第10章 俺だけの物語

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 その二枚の紙はそれぞれ半分にちぎられていたらしいのだが、セロハンテープで止めてあり、元の状態に戻っている。そして、その手紙の差出人は……。 「親父……」  あの手紙だった。俺が怒りに任せて破いたあの手紙。歴史家からもらったあいつからの手紙……。なんで……なんでサナは最後に……こんなゴミを……渡したんだよ!?  俺は怒りすら通り越しため息をつき手紙を横にあるテーブルに投げ捨てるとベッドに転がる。あえて視界に映らないようテーブルに背を向けて体を横にする。そこで視界に広がったのは窓から見えるこの世界の景色だった。  青い空、ところどころにある雲。やはり、平行世界だったというだけで空は同じ。実に広大で美しい青が広がる。だが、そこに炎の天井などはない。  しばらく、ぼーっとその空を見続けていたが、どうしても気持ちがソワソワする。どうしようもない感情が俺を次々と襲い、否応なく体を起こし、手紙を手にとった。
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