第10章 俺だけの物語

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 最初のほうの内容は既に知っているので適当に目を通しながら、続きの文を探す。 『どうだ? すごいだろう。少し前まで動物研究やっていた俺が世界を動かす一大プロジェクトをになっているんだぜ。へへっ、すげえもんだよ』  ここまで読んだんだ。ここまでずっとあいつのやってきたこと、成果ばっかりずらずらと書き連ねていった内容だ。  その先も同じようなのが続いているだけだろう、そんな思いで続きを読み進めていく。 『いやあ、しっかし、本当にとんでもない世界だよ。  俺はここの人たちに知らないことを教えていく立場だが、俺だって新しく知ることはいっぱいあった。おもしろい、本当にな。  ああ、やっぱダメだな、俺は。チクショウ、紙の上でも素直になれねえ。いや、素直になる。この手紙ぐらいは素直にならなきゃいけねえよな。  いや、素直になる。  素直になる。  二枚目になったら素直になる!  へっ、なに書いてんだろうな、俺は』  素直になる? 急に雰囲気が変わり始めた。その流れのまま、二枚目へと目を移す。 『約束だ、素直になる。すまなかったな、悠斗』 「え?」     
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