56人が本棚に入れています
本棚に追加
『本当に悪かった。俺は結局一度もお前に父親らしいことができなかった。毎日毎日研究研究、世界中あちこちに飛び回っていたから、ほとんど家に帰ることもできなかった。
お前とも遊んでやれなかった、それどころか、一緒に飯食ったことあったかな? いや、なかったな。本当に父親としては最低だ。子供の面倒はすべて母さんに任せっきりだったからな。
今さらいいわけななんざしないさ。研究にすべての情熱をかけること、自分の好きなものに夢中になれることがかっこいい男の姿。
そんな姿をお前に見せたい、そういう背中を見てもらいながら成長して欲しいなんて思っていたけど、違ったよ。まず、お前には背中も見えねえよな。
それが、この世界に来て、本当に二度と一秒たりともお前の姿を見ることができないと知って初めて理解した。遅いよなぁ、ああ遅すぎる。チクショウ。失って初めてわかることがたくさんあるっていうけど、本当にそのとおりだよ。
なあ、母さんはどうしてるよ? 俺がいなくなっちまったら家計はどうなるんだ? やっぱり、母さんには無理をさせることになってるかな。
母さんにも悪いことした。もし、お前がまた母さんに会えるのだったら、すまないって伝えておいてくれよな。
って、お前がここに来ちまったのに、母さんとまた会えるわけないか。
最初のコメントを投稿しよう!