第10章 俺だけの物語

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 てことはお前がここに来たら母さんにひとりになるのか? そりゃダメだ! 絶絶対ダメだ。来るな、お前は来るな! この手紙を読むな! この世界には絶対来るんじゃないぞ!  本当になにを書いてんだか……ああ、帰りてぇ。チクショウ、帰りてぇ。  家族に対して何にもできず、母さんにも悠斗にも迷惑かけてばっかり。その穴埋めすらできないまま、この世界で俺は死ぬのか? 本当に帰りてぇ、そして謝りたい。  せめて会いたい。悠斗、お前にだけは会いたい。この世界で死ぬことになってもいい。最後でいい、最後でいいから、お前の顔だけは見たい。どうせだったら、少し成長したお前の姿を見てみたいな。  大学生のお前? 成人するお前? 結婚するお前? いや、もう贅沢など言わない、中学生になったお前でも十分だ。最後にお前の顔を一目見たかった』  なんで……なんで、こんなところで素直になるんだよ……。だったら、最後に出会ったあのときに言えばいいじゃねえかよ。  俺が「謝れ」って言ったときにこれを言えばいいじゃねえかよ! なんにも素直になれてねえじゃねえか! 『もう、いくら言っても無駄か。もういい。とにかく、もしこれをお前が読んでいるのなら、きっと母さんもおらず、お前ひとりなんだろう。だから、そんなお前に最後に父親として励ましのアドバイスだ。  お前の中ではお前が主人公だ。     
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