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膝を折り、手を伸ばす。
虐げられた命は容易く私の腕に収まった。
攻撃され、否定される。これはおかしいのか、普通なのか。何も分からないまま体をさすり涙を堪えてそれでも帰りを待つしかない。閉じ込められた世界には、あの人しか存在していない。
外に出ることが解放ではない。私のように、新たな恐怖と戦わなくてはいけなくなる。
「…大丈夫。いつかは、終わるから」
「私も、君と同じなの」
小さな掌が私の肩に触れる。
「…痛くない?」
掠れる声は、私を気遣う。
はじめて聞くそれは、ずっと前から知っていた気がした。壁越しの音は、決して声ではなかったのに。
「今は、痛くないよ」
未来を思うと心が傾ぐ。手が震える。私が出来る最善は何だろうか。
しっかりしろ。しっかりして。
それでも彼は手を伸ばしたのだから。私は答えを探すように、小さなぬくもりを抱き締めた。
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