壁越しのふたり

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※ トントントン 「…起きてる?」 トン 「おかあさん、また出てっちゃったね」 トン 「今日はね、大晦日なんだよ?一年が365日あって、その最後の日。知ってた?」 トントン いつもと変わらない音が、いつもより私の心に触れる。 「…これも知らないかな?大晦日にはね、願い事を一つするの。一年で最後の特別な日だから、神様が叶えてくれるんだよ」 思えば、初めて吐いた嘘かもしれない。 自分が優しくされたから、誰かに優しくしたかったのか。それとも自分勝手な優しさを押し付けて、感じた胸のつかえを誤魔化したかったのか。 今更引き戻すことも出来ずに、私の嘘が壁を伝わっていく。 「君には、願い事ってある?」 あるに決まっているじゃないか。 だって私は、毎日願っていた。
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