第四幕 研修期の終わり

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「それでも、私は信じられません……」  時花はしかし、認めたくなかった。  大好きなこの店が、憩いの場が、不正に染められていたとは考えたくない。  三年前のことなんて知る由もないから、なおさら現実味がない。  時花にとって、ここは聖域なのだ。 「矢陰光さんも、悪い人じゃないと私は思いますっ」 「何を根拠に……」 「だって、店長が一度は愛した女性でしょう?」 「!」 「店長ほどの人が好きになった女性が、悪さをするわけないじゃないですか……だから私は、むしろ贋作を判定したという銀座の(・・・)鑑定士がおかしい(・・・・・・・・)と思いますよっ?」  鑑定士。  そうだ。疑うべきはその人をおいて他にない。  そいつこそが、パテック・フィリップを『贋作』だと難癖を付けた張本人なのだから。  ヒモ大学生の質入れを拒否し、突き返した元凶――。 「本気ですか、時花さん?」 「もちろんですっ! ヒモ大学生と共謀してイチャモンを付けた線も否定できません!」  時花はここぞとばかりにまくし立てた。  こちらに非がないと仮定すれば、悪いのはあちら……原告側しかない。 「ヒモ大学生は『時ほぐし』で化けの皮を剥がされ、当店を逆恨みしてたんです。だから鑑定士にわざと偽物の鑑定をさせて、それをネタにうちを潰そうとしてるのかも!」
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