第四幕 研修期の終わり

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 抑圧されていた激情が炸裂した。  たまりにたまったストレスを叩き付けてやらないと気が済まない。時花らしからぬマシンガン・トークは鑑定士の気勢を()ぎ、脱力させた。 「う、うるさいっ! 青二才が口を出すな――」 「もう言い逃れは出来ませんよっ。刑務所できっちり罪を償って来て下さい!」  相手の言質はすでに取った。  時花の目配せとともに、叶が携帯電話をかける。警察への通報だ。  溝渕もそれを黙認した。鑑定士を贋作騒動の犯人として突き出せば、全てが丸く収まるのだから止める理由はない。  鑑定士はソファにうなだれた。時花に気圧(けお)されて、すっかり覇気を失ったようだ。 「店長、これで一件落着ですか?」 「ははは。時花さんの啖呵(たんか)(あなど)れませんね」相好を崩す店長。「やはり僕が見込んだ通りの店員です。研修期を経て、一人前に成長しましたね」 「はへっ? あっ、いえ、べ、別に私は、ついカッとなって見境が付かなくなっただけでして……あぅあぅ」  みるみる頬が赤くなった。  後先考えず突っ走った軽挙(ドジ)と、思いの丈をぶちまけた自己主張。  人は、想いの力で動くものだ。  本音をぶつけなければ、世界は変わらないから。  時花はまさに今、それをやってのけた。  つたないながらも、店員の立場から訴えかけた。 (やっぱり私は『時ほぐし』が好きです……研修期で終わらずに済んで良かったです!)  彼女にとって、今日がかけがえのない転機となったのは間違いなかった。    *
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