0人が本棚に入れています
本棚に追加
兄は僕より二個上の、三十二歳だった。
昔の僕は、兄と同じことを何でもした。漫画も、カードゲームも、野球も、何でも同じものにはまった。兄の友人たちは僕が遊びについていくと、必ず混ぜてくれた。年上の人たちと遊んでいるのは楽しい特権のようで、同級生に対しても少し誇らしかった。その後も兄弟仲は悪くなかったが、僕が地元岡山を出て東京の大学に行ってからは、会う頻度も減った。兄は岡山市役所で働いていたから、仕事で東京に来る機会もなかった。いや、あったのかもしれないが、僕が仕事で忙しくしているのを知っていたのか、向こうから連絡を寄越してくることはなかった。
最後に会ったのは二年前の年末年始に、僕が彼女を連れて帰省した時だったと思う。
兄は寡黙ながら、いいやつだった。しかし、変わっているといえば変わっていた。
その帰省の時だって、どんな風に気を遣ったのか、僕の彼女と極力顔を合わせず、食事の時以外は部屋にこもっていた。彼女は、兄に嫌われたかと困っていた。僕の方こそ、彼女に申し訳なくて、家族ごと彼女に嫌われていないか心配だった。後日、「鏡開きした。彼女によろしく」とだけメッセージをつけて、鏡餅が家に送られてきた。彼女とげらげら笑いながらお汁粉を食べた。
最初のコメントを投稿しよう!