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婚姻の話が持ち上がったのは、十六歳を迎えた誕生日の夜だった。この国の王族として生まれた女性は、人生の伴侶をその年になったら選ばなければならない。幸か不幸か、我が国は東の大陸に幅広く領土を持った歴史ある大国で、こんな薄気味悪い赤銅色の髪と、ぱっとしない容姿を宿した末の姫君であっても、縁談の申し込みはあちこちからやって来るらしかった。毎日と言っていいほど、会ったこともないどこぞの国の王子から、誰のことを述べているのか分からなくなるほどの、歯の浮くような賛嘆賛辞が、綺麗な便箋と共に届けられるのだ。
(全部に目を通してから判断しなさいなんて、お父様も酷な事を仰るわね……)
どれもこれも似たり寄ったりな内容なのだ。それだけに、わざわざ開いて見ることすら、面倒になっていた。
(どうせ、私がどんな人間かなんて、きちんと知らないでしょうに……)
よくもまあこんな美辞麗句が、思い付くものである。
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