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 そうして、もう何枚目かも分からない便箋を、また床の上に散らしていく。ただの流れ作業にも化してきたこの行為だが、やっとテーブルの上の量も少なくなってきた。どうして公の場でもない自分の部屋で、こんなにも労力を使っているのか、馬鹿馬鹿しいにも程があるが、また適当な一枚を指先でつまみ上げた。 (……ん?)  そこでふと、手が止まる。 (……これだけ、他のものとは少し違うわね)  目に入ったのは、飾り気のないシンプルな白い封筒。今までの手紙は封筒に金色の縁取りやら、光る飾りが散りばめられているやらで、華美なものが多かった。けれど、今掴んでいる封筒は真っ白で、外側には宛名も、差出人の名前すらも書いていない。 (書き忘れたのかしら……?)  まさかそんな間抜けな王子が、この世の中にいるとは。半ば呆れながらも、ピリピリとペーパーナイフを当てていく。 (えっ……!)  入っていたものに釘付けになる。それはたった一枚のメッセージカード。しかし、メッセージはおろか、そこには一文字だって書かれていない。 (どういうこと?)  取り出した白紙のカードを、まじまじと見つめる。何の気なしに裏返してみれば、そこにようやく短い文章が表れた。 (これって……)  近年、西の大陸で大きな勢力を持ち始めたとされるとある帝国の名と、人の名前と覚しき文字の列。それが挨拶の言葉なども一切なく、ただ簡素な二行で綴られていた。 (これ、恋文なの……?)     
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