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何だか夢半ばで折れた冒険者みたいな気分で、その城門の周囲をとぼとぼと歩くことにした。幼い子供が遊ぶみたいに、縦に嵌まっている鉄格子の棒を片手で触っていく。本当は太い木の枝でもあれば音を鳴らしながら進んで、この沈んだ気持ちを少しだけ楽しいものにできるかもしれないのだけれど、そうしたらこんなふうにこそこそと内緒で行動している意味が無くなるので、ここはぐっと我慢する。
「あの、すみません……」
そうして、鉄格子を触りながら行ったり戻ったりを繰り返していると、唐突に小さな声が聞こえた。
びっくりして声のした方向へ振り返ると、鉄格子を間に挟んだ外側に、一人の小柄な少年が立っていた。
「あ、驚かせてしまって、すみません。実は、お城宛の郵便を届けにあがったのですが、僕はこの仕事をするのが今日が初めてでして、どうすればいいか勝手が分からなくて困っていたのです。もし可能でしたら、貴方にこの郵便物を託してもよろしいでしょうか?」
郵便配達人の帽子を被った少年は、見るからに自分よりも年下で、年齢は十歳かそこらだろうと思われた。それなのに、喋り方が妙に大人びていて、しかも立ちい振舞いまで紳士然としていて、よほど仕事をするためのマナーや敬語を勉強したのだろうと思い、その態度が何だか可笑しかった。
つい口元を少し綻ばせながら、鉄格子の隙間から両腕を突き出す。こちらが了承したことを確認した少年は、ほっと安堵したような表情になって、抱えていた郵便物を私の手のひらへと差し出した。
「ありがとうございます。助かります」
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