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「やはりそうか」
先子の暴露に俺は静かにうなずいた。
「初代、つまり貴方のお姉さんから何代かは『邪神を封じた勇者パーティーの子孫』ってことで、うちに嫁ぐことは名誉なことだったのね。でも月日が経って『邪神の監視人』て言葉からマイナスイメージが強くなってからは、逆に加賀地家に嫁・婿に入ることは不名誉になった。普通の人間は来てくれなくなって、次第に何らかの能力持ちで他では忌避された人や行き場のない妖とかしか来てくれなくなったのよ。ああ、何人かは今も生きてるわね」
「知ってる。さっきスーパーで会った」
真剣にお菓子どっち買って帰るか迷ってたから、俺も協力した。とても大事な選択である。
「東子も義母君もけっこうなハイブリットというわけだ」
先子はあっさり手を振った。
「そうでもないわ。有益な能力の持ち主や力の強い人はあっちに取られて、その残り物だもの。妖も強いものはわざわざ人間と結婚する必要はないでしょ。ワケありとか弱くて一人じゃ生きられないのばっかよ。だから私も普通の人間に毛が生えた程度」
「あー……うん、うちは代々そういう人ばっか嫁や婿にしてた。けっこう強引なやり口のこともあったって聞くね。僕はそれも嫌だったわけだけど……」
東治が気まずそうに頬をかく。
あっちとは自称『生き神』の神社で東治は神主の実弟。ああ、もう神社自体なくなったから元神主か。
二人とあそこは仲が悪い。東治が加賀地家の迫害に同調しなかったことから追い出され、先子に拾われたらしい(東治談)。
「しかし、チリも積もれば山となるように東子で発現したわけだな。二つの系統のハイブリットが合わさった結果というか。奴はわざと子孫に力のある者と結婚させ、より強力な子を作ろうと考えていたようだ。自分が復活するための依り代だな」
「―――あ……!」
二人とも息をのむ。
「元々異常な思考の持ち主だった奴は、一方的に好意を寄せた姉さんにフラれたことでさらに歪んだ。神をも超える存在として復活しようと目論んだんだろう」
「それでどうするつもりだったのかしら。だって貴方のお姉さんは黄泉でしょ? 復活しても彼女はいないのに」
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