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つの
「ご新婦様、それでは参りましょうか。ご新郎様が首を長くしてお待ちでございますよ」
わたしは重くて下がったままになっている首をすこしだけ縦に動かしました。
「おきれいですわ」
「白ってご主人のおうちに染まるという意味なんですよねえ。よくお似合いです。」
手を引きながら係の女性はそんなことを言って気持ちを盛り上げてくれます。
新郎新婦入場のために新郎控室から先に出てきていた紋付き袴姿の夫が目尻をさげています。
「美優、すっごいきれいだ」
小声で夫となる男が囁きます。
あなたになんかもったいないくらい。
そう言いたいけれど、そんなことはおくびにもださずにわたしは少しだけ微笑みました。まったく白無垢というのはどんな女でも貞淑な女に見せてくれるものです。角隠しで隠してしまえば、忌々しい二本の鋭く尖った角も隠れてしまいます。
新郎新婦ご入場でございます、司会の朗らかな声が響き、それを合図にわたしたちはゆっくりと歩いていきます。目指すテーブルがありました。若い夫婦の間に挟まれて、かわいい女の子が座っていました。髪はさらさらとして、隣の母親によく似ていました。父親のほうは花嫁のわたしを見もせずに娘の髪の毛を直してやっています。わたしが主役だというのに不快なことです。
わたしはその子に向かってにっこりと微笑みました。
了
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