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無線が終わらないうちに、休憩中の二人もサッと立ち上がって小走りに事務所を出て行った。
「ごめんね? 『ちゃん』付けして。ちょっとお勉強中断。またあとでね? 凜ちゃん」
「はい。あの、私は、その、……嬉しいので」
「翔ちゃんっ? セクハラよっ?」
小田部係長の声に重なって、次の無線が流れる。
『県本部から強盗容疑事案従事中の各局、事件内容の手配。現場は赤坂三丁目ファミリーセブン赤坂三丁目店。被疑者は若い男性一名、茶髪、サングラスにマスク、灰色パーカー、ベージュ色作業服ふうズボンを着用。拳銃様の凶器を所持』
「凜ちゃん、無線、ちゃんと聞き取れる?」
「えっと、……頑張ります」
「あああもうっ、あたしのことも麻里ちゃんって呼んでっ!」
『被疑者はさきコンビニ店で男性アルバイト店員に拳銃様の凶器を突きつけ、「金を出せ。出さないと撃つぞ」と脅迫、現金約六万円を強取。その後、ナンバー不明の黒色スクータータイプ原付で六本松方向へ逃走』
一生懸命に無線に耳を傾けている凜ちゃんをちょっとだけ微笑ましく思いながら、僕はさっと席を立って無線機の前に陣取った。
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