238人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
いとし年越し2
最終的に手荷物は、スーパーの袋二つに牛丼屋の袋一つ、全部で三つになった。
スーパーの袋を両手から提げる乾の後ろで、牛丼の具の偏りを気にしながら階段を上る。
「おお」
玄関の鍵を開けた乾が、少し仰け反ってから慧斗を振り返った。
「俺にも静電気、来た」
嬉しそうに言うから、笑ってしまったではないか。
乾は荷物を置き、ハイカットのスニーカーをごろりと脱ぎ捨てると、まずはヒーターのスイッチを入れに行く。
「うわ、何℃だと思う?」
身震いする程度には寒い。慧斗もスニーカーを脱ぎ、部屋に上がりこんだ。
「わかんないけど、一桁だと思う」
「正解。八℃だって、八℃」
部屋が暖まるまで、まだしばらくジャケットは脱げない。
乾はというと、さっさとコートを脱いでハンガーにかけ、カーテンを閉めながらリモコンをテレビに向けて電源を入れる。夕方のニュースが流れているところだ。
「昼間、大掃除したから、どこ座ってもだいたいきれいだよ」
「大掃除?」
このシンプルな部屋の、どこを大掃除できるんだろう。
「つっても、カーテンレールとか拭いて、いつもよりちゃんと掃除機かけたくらいだけど。あ、でも水周りは本気で掃除した」
最初のコメントを投稿しよう!