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 ひょっとして、今起きていることは現実ではなく、夢ではないかという気がした。病の床に就き、最期に見る夢。それもよかろう。これほど自分らしく詩的な今際の際の夢を見られるならば。  もしも後世に我がことが語られることがあれば、その死に際はこの夢のように語られるだろう。  酔って水面に映る月を捕らえようとしての水死。いかにも我らしい。  そう、詩としては長庚を求めるよりも月のほうが美しいのだから。  ああ、暖かく深い眠りが身体を包み込んでいく。                   ***  李白、字は太白。唐代の詩人でその作風から後の世に詩仙と称される。  代表作には「白髪三千丈」で知られる『秋浦歌』などがある。
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