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第四章
ふいに九郎が後ろを振り返った。
「うむ、来客のようだ」
え?
「邪魔するわよ」
そこには美少女JS妖狐警察長官と神の力の一部を持つ骨董屋店主がいた。
「綺子ちゃん、ひさしぶり。比良坂さんまで」
「視察口実に報告をね」
「外で話すことじゃないな。こっちへ来い」
九郎は本殿の中へ案内した。
今日は祈祷もなく、誰もいない。人に聞かれたくない話をするにはここぐらいしかなかった。
流紋さんは空気読んで他の手伝いに行った。が、上弦さんは頑として「蛇神様のお傍を離れません!」と言い張った。
綺子ちゃんは冷たい一瞥を投げかける。
「あんた、狼の上弦ね。本人いるならちょうどいいわ。あちこちから苦情が上がってるのよ。これ訴状」
「苦情だと?」
「しつこくつきまとわれて封印を解く方法知らないか聞かれたとか、いきなり押しかけてきて居丈高にあれこれ命令されたとか、困ってたから親切にしてやったのに礼言うどころか食べ物や持ち物勝手に持ってかれたとか。恐喝や盗みで逮捕されても文句言えない罪状そろってるわよ」
うっわぁ……。
九郎は天を仰いだ。
「蛇神様のために必要と判断したまで。大義のためには犠牲が必要だ」
「ふん。手がかりもつかめず、ただ放浪してただけじゃないの。あげく、女の子にあっさり封印解かれてちゃ立つ瀬ないわね」
女の子って、綺子ちゃん。あたしはあなたよりはるかに年上ですが。
上弦さんが言葉に詰まる。
「反省も見えず、と。よし、連行するわ」
「待ってくれ」
止めたのは九郎だ。
「とはいえさほど重い罪状ではないのだろう? でなければとっくに居場所突き止めて逮捕しているはずだ。こいつの行動の原因は俺にある。すまない」
上弦さんは大慌てで、
「蛇神様っ! 貴方様がなぜ頭を下げなさるのです!」
「こいつはこちらでしつけ直す。被害者への賠償も立て替えよう」
「ちゃんとしつけられるかしらね。……まぁそうよ、軽微な犯罪ばっかりね。ただ繰り返してたぶん重いわよ。何も罰なしで許されるもんじゃないわ」
「それは仕方あるまい」
「少なくとも首輪くらいつけてもらおうかしらね。悪いことしようとしたり、生意気な態度とったらギリギリ締まるの。孫悟空の輪みたいに。―――比良坂士朗」
「ほらよ」
年齢不詳のイケメン比良坂さんはどう見ても犬の首輪を取り出した。
「こんなんでいいか?」
「十分よ。さ、つけなさい」
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