第一章

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 かつて邪神を封じたという神社があった。  昔、『生き神様』とまで呼ばれた英雄が悪しき神を退治し、封印の社を建て、監視人を置いた。初代神主の厳命と共にその役目は代々受け継がれ、遥かな年月が過ぎた。  そして現代。神主の娘加賀地東子―――つまりあたしが封印を解いてしまった。そこで判明したのは言い伝えとはまったく異なる真実だった。  色んなものから解放された蛇神はあたしを嫁にすると言い張り押しかけ、なぜか主夫やらユーチューバーやらゲーマーやってる。  意味が分からない。  なりゆきから「九郎」と名づけた彼は、八岐大蛇の息子なことから父親への恨みのとばっちりよくくらう一方、父親から助けた者達に慕われている。かつて勝手に配下になると言い集まるも解散させられた彼らは諸々の脅威がなくなったことから再び集結。街に定住した。  九郎は彼らの働き口を作るためにも、マイナスイメージを変えるためにも土地神の仕事を意外と熱心にやってる。おいしいスイーツ店や温泉施設作ったり、あたしが通ってるから一緒に通うことにした高校と農家を提携してショップ出したり。神社も邪神の封印場所から、今じゃ縁結びの神社として有名な状態だ。  どうしてそうなった、とツッコんだあなたは過去作参照して。  九郎のやつ、けっこう広い神脈(人脈)持ってるのよね。それのおかげでこの間、あたし自身の特殊な宿命が判明した。で、とうとう守ってくれる代わりに嫁になると承諾したんだ。  ただし後悔することが多々ある。  ―――さて、これは『神様たちのクリスマスパーティー~ついでに結婚式やっちゃおうぜ~』の後のお話。
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