第一章

3/8
前へ
/40ページ
次へ
「東子―、テストどうだった?」  聞いてきたのは隣の席に座ったうちの祭神様。ナチュラルに制服着て溶け込んでます。  ヒト型に変化、髪と目の色を黒に擬態してるという念の入れぶりだ。でも本人曰く「イケメンは隠しきれない」。ツッコミたいが事実なんでどうしたもんか。  神通力を使って転校生として入り込んだ九郎は返された期末テストを見せた。 「俺はこんなとこ」  あら、意外。神様なんだからオール満点かと。  率直な感想を述べれば、 「わざと平均点になるよう調整してるんだよ」 「ああ、目立たぬよう配慮はしてるんだ。……その外見で? 最初イケメン転校生だって女子の集団に囲まれたじゃないか。神通力でやめさせたから今は普通の高校生できてるだけじゃないの」 「俺は東子しかいらない。他の女に好かれても意味ないし、前みたいにそれで東子に迷惑かかるのだけは避けたい。嫁を守るのは当然のことだと思う」  期末テスト返却後の教室で言うセリフか。  アホ蛇神がこんなこと言ってても誰もおかしいと思わない教室って異常。 「加賀地さんとこ、夫婦仲いいなぁ」 「加賀地くんてばほんと奥さん大好きねー」  とか言ってくる始末だ。舌切ばさみで舌抜いたろか。 「うらやましいなー、彼女ほしー」 「いい人いたら紹介してよ。ただしイケメンに限る!」  わははと笑いに包まれる教室。 「ああいいぞ、みんな初詣ではぜひうちに。若い子いっぱい参拝に来るからな」 「おっ、いいね! よし行こう!」 「ただし強引なナンパはやめてくれよ。紳士的にな。そのほうが男はモテる」 「もちろん。おれたち超ジェントルマンだし~」 「わたしたちもイケメン探しに行こ~っと」  さりげなく宣伝してる祀り神様。  げんなりして額に手をやれば、指に指輪がはまってるのが目に入った。  まったく求めてないサプライズ結婚式ではめさせられたものだ。蛇が巻きついたデザインというあからさまなそれは、まじないをかけてあるのか外れない上に学校では見えないという配慮あり。  九郎も蛇神、気に入った者に対して強い独占欲と執着を抱くのは本能のようなものだという。イザナミノミコトからは 「しつこくて嫌になったら連絡して。これラ●ンのID。匿ってあげるわ。アホ亭主には相応の制裁加えないとね」  というありがたいお言葉を頂いた。あとラ●ン交換した。神様も無料通話アプリ使ってるらしいです。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加