第一章

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 後ろの方でイザナギノミコトと須佐之男命親子がガクブルしてた。  まぁさすがにそこまではしないけど、いっぺんこいつどうにかすべきかなとは思う。  はーっと盛大なため息はいたところでチャイムが鳴った。 ☆ 「バイバ~イ」 「またねー」  さあ、冬休み。どこ行こうか~っと多くの家庭では考えるだろうけど、うちはそうもいかない。神社は年末年始大忙しです。 「東子―っ、寒いよ。あっためてー」  どーんと背後から九郎が抱きついてくる。暑苦しい。 「離れなさい」 「ドライだなぁ。そんなとこも好き。蛇の姿で首回り巻きつくのは駄目だっていうから、ヒト型にしたのに」 「余計危ない。いいこと考えついた。マフラーにこう……海苔巻きみたいに巻き込むのは? あったかそうよ」 「それ俺大丈夫かな」  さりげなく巻きついてくる尻尾はつかんでおく。バレてるっつーの。 「なに、テストの点でも悪かったの?」 「別に。いつも通りよ」  成績はいいほうだ。というのもいじめや嫌がらせを長く受けていて、放課後友達を遊びに行くこともできず、勉強するしかなかったからだ。成績よくして一目置かせなければ、もっとひどいことになってただろう。 「そうじゃなくて、少しは人目を気にしろって言ってんの。通学路よ」 「東子は真面目だなぁ」 「あんたが不真面目すぎんの。……あ、雪華さーん、剛力さん、流紋さん。こいつにちょっと言ってやって」  同じ制服着た三人を呼び止める。たおやかで古風な大和撫子が雪華さん、冬でも半袖Tシャツなムキムキマッスルが剛力さん、小柄で小動物みたいな男の子が流紋さんだ。  三人とも人間じゃない。正体は妖で九郎の配下だ。  過保護な九郎は自分だけじゃなく配下まで潜入させるという手段を取った。  鶴の妖である雪華さんは困ったように、 「といいまして東子様。九郎様は蛇神なので抱きつくまたは巻きつくという行為は習性なんですよ」 「JKが九つの頭持つ大蛇に巻きつかれてるってかなりデンジャラスな状態だと思う。虐殺一歩手前じゃん。普通の人には見えてないけど」 「九郎様は東子様を守りたいわけですし、バリアと思えば」 「そうそう。それだけ愛されてるってことですよ!」  兎の妖の剛力さん、鬼の流紋さんが口々に言う。  そんな愛いらん。  え、描写逆じゃないかって? 合ってるよ。剛力さんがマッスル兎、流紋さんが弟キャラ鬼だ。
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