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大変お若い、というか幼い、坊ちゃまとでも呼ぶべき方がもう少し背の高い四人組に囲まれ、蹴られたり殴られたりしています。小さな体に降りかかるいくつもの拳を見て、私は不快感を覚えました。人間様方は存じ上げないかもしれませんが、我々にも喜怒哀楽は宿っているのです。
ご主人様も同様の不快感を覚えたようでした。私をベンチに置いて徐に立ち上がり、暫し迷ってからまた座られました。そしていつものように組んだ足の上に私を斜めに携え、弾き始めました。
我々とは違う材質のものが弦に触れ、なぞって音を奏でて頂くというのは我々の存在意義であり喜びなのでございます。何かを任された人間様が胸を張るように、我々弦楽器はぴんと弦を張ります。
いつもはクラシックの穏やかな調べを紡がれるご主人ですが、この日はいつもとは違い、アイドルソングやCMソングなどいわゆる流行歌といわれるもののサビの部分を軽快に奏でられました。
ここはご主人様行きつけの小さな児童公園。大体空いており、今も園内にはご主人様と私、意地悪な四人と坊ちゃまの他に誰もいません。
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