3/12
前へ
/37ページ
次へ
何曲か弾く内、殴ったり蹴ったりしていた方々が合間にちらちらとこちらを窺うようになり、十曲程終える頃にはみな手を止めて聴き入っていました。 そうしている内に、一人の方が園内にある時計を見上げ、「やべっ」と言って坊ちゃまの襟首から手を放しました。他の方々も「うわ、もうこんな時間かよ」「塾遅刻決定じゃん」とぼやきながら何やら急いで去って行きます。不快なお遊戯をご主人様の機転が終わらせたのです。 最後の一曲を弾き終えたご主人様はストラップを取り付け、私を首から提げて立ち上がりました。掴まれていた襟首を急に離され、尻餅をついている坊ちゃまに歩み寄ると右手をさしのべます。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加