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校門の近くで待機していた車の後部座席に竜胆は乗り込んだ。
「藤、出してくれ」
運転席に声をかけると、バックミラーで竜胆が抱きかかえた少女を確認した運転手――藤が驚いたように声を上げた。
「何かあったんですか!?」
広い座席に抱えていた少女をゆっくりと寝かせながら、竜胆は複雑そうな表情になって淡々と答える。
「…………紅羽と接触した」
「――ッ!?」
藤の表情がこわばった。
竜胆に促され、車を出す。
しばらく車内を沈黙が支配していたが、前を見ながら心配そうな声音で藤が呟いた。
「それは…………非常にまずいのでは?」
「あぁ……最悪だな」
こんな雪の日に、最も会わせたくなかった男との再会。
運命の皮肉にもほどがある。
つい先ほどの出来事を思い返して、竜胆はしばらく学校に行かせるのはやめようと決意した。
***
「紅羽!」
「あ、いたいたー! やっと見つけた」
思案気な表情のまま連絡通路に立ちすくんでいた紅羽に、椿と楓が駆け寄ってきた。
必死に探し回ったのだろう、二人とも息を切らしていた。
「……なんかあった?」
紅羽のただならぬ様子に違和感を覚えたのか、楓が小首をかしげて問う。
「……紅羽」
敏感に何かを察したらしい椿が不安げに紅羽を見上げてくる。
紅羽は気だるげにため息をつくと、椿の頭を無造作に撫でた。
「…………いや。なんもなかった」
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