赤い色が嫌いなあの人は雪の日も嫌い

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赤い色が嫌いなあの人は雪の日も嫌い

赤い色が嫌いなのだと、あの御方だけどあの御方ではない人は言いました。 雪の日はもっと嫌いなのだとも言いました。 理由を尋ねたら、真っ白で色のない世界は、美しいけれど寂しいし、嫌いな赤い色が映える景色だから嫌なのだと。 それに、と続けて、 雪は冷たくてすぐ溶けてしまうし、儚くて――手からナニカが零れ落ちて消えていくみたいで哀しいのだと言いました。 俺には、 覚えていないはずなのに、そんな風に考えている貴女の方が哀しいと思った。 この御方は、生まれ変わってもまだ――囚われてしまっているのだろう。 この世に神様なんてものがいるとしたら、この御方に対して残酷すぎる仕打ちをしたことを恨んでやる。 どうして、この御方を自由にしてやらない。 なんで、この御方の心を解放してやらない。 ――記憶が自分自身を縛る枷になりそうではないですか って、貴女は“前に”言ったけど、 記憶がなくても、貴女はまだ縛られているじゃないですか。 ***
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