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「後半〝元王サマ″勢揃いやないか……何で百合ちゃんだけ、ダメなんだろうな」
「……どう考えたって原因は一つでしょう」
吐き捨てるように呟かれて、皐月は乾いた笑で返す。
「あー………………ははは。ウチの〝元王サマ″が原因デスヨネー」
本当の原因はわかっていないけどれも、竜胆は確信している。
おそらく“前”のあの御方の“記憶”が、“今”のあの御方の状況に大きな影響を及ぼしたことは間違いないと。
竜胆は冷めてきたコーヒーを一気に飲み干した。
直後、ふと窓の外を見ていた皐月の目が細められる。
「……雪か」
「――ッ」
「今日の天気予報、雨だって……」
舌打ちをした竜胆は代金をカウンターにおくと、喫茶店を飛び出した。
いつから降っていたのか、室内にいたのでわからないが、地面にはすでにうっすら雪が積もっていた。
夕方までには、もしかしたらもっと積もるかもしれない。
白い雪、主の嫌いな白い世界。
携帯で藤を呼び出す。
<――竜胆さん?>
「藤、雪だ。先に車回してろ!」
一方的に通話を着ると、竜胆は忌々しげに舌打ちして空を見上げ、主の下へ向かうべく走り出した。
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