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はらはらと降り注ぐ雪の結晶が、世界を白く染め上げる。
待機していた車から外に出ると、一面の雪景色が広がっていた。
それを美しいと言う人もいるだろう。
けれども、彼にとって雪の日は、自分の主がもっとも不安定になる日だということをよくわかっていた。
今朝の天気予報では今日は雨だったはずなのに。
まさか、それが雪に変わるとは。
しかも、やはりというか、夕方までには見事に降り積もってしまった。
どんな異常気象だと、舌打ちせずにはいられない。
雪が降るなら、あの人を学校になんて行かせなかったのに。
「――チッ……いないっ……どこいったんだよ、あの人はッ……!」
迎えの場所――学校の玄関に、いつもならすでに待っているはずの主の姿がないことを確認した竜胆は、とっさに表情を歪めた。
あの人に限って遅れるなんてありえない。
万が一遅れるような事態になった場合は、竜胆に連絡をよこすはずである。
それがないということは、おそらく竜胆が危惧していた事態が起こってしまっている可能性が高い。
彼の顔から窺えるのは、苛立ちよりも焦りだった。
竜胆はすぐさま携帯を取り出すと、校内にいるはずの瑠璃に連絡を入れた。
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