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彼女は写っていた。が、その姿はまるでごく普通の、どこにでもいる少女のようだった。髪も瞳も黒く染まり、肌は若干色白ではあるもののそれは人並み程度のものだった。
これで漸く、はっきりと理解する事が出来た。
彼女の正体。それは雪女だ。
信じ難い事ではあるが、根拠なら山ほどある。
そもそも彼女が現れたのは十二月。ちょうど本格的に寒くなってくる時期だ。雪女といえば、昔話の影響で人を凍らせたりするイメージが強いが、彼女はどうも違うらしい。なんせ人里まで下りて来て人間達と仲良く勉強しようとするのだから。そして、その為に人間に化けているつもりらしいが、俺の目は誤魔化せなかったという訳だ。スマホのカメラでさえ騙せた彼女が、どうして俺の目を誤魔化せないのかは分からないが。
兎に角、彼女が人間でない事は明らかだ。
その日以来、俺は彼女に近づかないよう心がけた。
しかし、だからといって避けまくる訳ではない。その行為がかえって彼女の気に触ったりすれば、大惨事になる可能性がある。
なるべく近づかず、かといって近づかなさ過ぎず。そう、彼女にとってのただの背景となる事を目指して。
この作戦で俺は十二月をやり過ごし、新学期の一月、二月、三月も難なくやり過ごす事に成功した。
そして学年が上がった四月。彼女とクラスが離れている事を祈りつつ、登校してみたのだが……。
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