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「失礼なこと言うなよ、藤田。俺はこんな不良タラシ会計のために、貴重な自分の血管を切ることなどない」
あまりと言えばあまりな言い方に、藤田もどうフォローすべきかと一瞬悩んだが、その横で盛大に噴き出したのは新井だ。
「ふ、ふ、不良……タ、タラ……っ!」
笑いすぎてまともに言葉にならない新井に、さすがの二人も呆気に取られる。
校舎に蔓延する腑抜けた空気は、生徒会室にまで侵食していたのだった。
ひとしきり笑った後、新井は仕事を振られる前にとさっさと部屋を出る。
そもそも情報収集のためだけに立ち寄ったのだ。ああも警戒されては浅尾から身になる話が聞けるとも思えない。
新井自身、先ほどの浅尾の言葉を否定するつもりもないし、自覚もあった。
百八十ちょうどの身長と、その甘いマスクは、良くも悪くも人を惹きつける。大した努力をせずとも人並み以上に勉強もスポーツもでき、そこから滲む余裕は、一部の者にとっては魅力のひとつとなる。そのおかげか小学生の頃から、新井の周囲では争奪戦が行われていた。
それは男子高校であるこの学園に来てからも変わらなかった。
もともと性に対しての概念が薄かった新井は、同じ同性の男から言い寄られても、特に嫌悪を感じることもなかったのだ。
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