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 かといって誰か一人に熱中することもなく、飽きれば次へ。だが、厄介な愁嘆場を繰り広げる気もなかった新井は、本気にはならないという前提の元に、適当に面白おかしく遊んでいた。  そのおかげで今では自他共に認める立派な尻軽男に成り果てていたが、それについてどうこう考えることもなかった。  ――ここ最近までは。  別に省みているわけではない。ただ、その遊びが最近面倒になっていたのが正直なところで。  男だから、溜まれば抜く。  それだけなのだ。  相手から身体の刺激を受けても、心は動かない。  その空しさは、友人といても払拭されることはなく、小さな切り傷のようにじくじくと新井の心を乱していった。  放課後の校舎の中は、すでに人もまばらだ。  新井はいつの間にか、自分の教室があるA棟三階への階段を上がっていることに気づく。荷物もすでに持っていて、何の用もない。だからといってすぐにUターンする気にもならず、新井はそのままゆっくりと脚を動かした。  階段を上りきり、何となく足を進めると、教室とは反対側の大きな窓が見えた。  外は雨。  だが、わずかに雲の切れ間から差し込む光のせいで、存外に明るい。  新井は窓辺に近づいた。  真下にある渡り廊下の白が、雨に濡れて青みを帯びているのは、反射のせいだろう。  さあさあと降り続く雨の軌跡の向こう側には、隣の棟が見えるだけである。     
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