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競技が終わり、自分の椅子に戻ろうとした時、ミナちゃんが松葉杖をついて待っていた。
私の顔を見るなり、「おめでとう!」と言って微笑んだ。
「すごかったね!三人追い抜くなんて」
ひねくれている私には、それが誉め言葉ではなく皮肉に聞こえた。
私がいなかったから、一位が取れたんだと。
「ミナちゃんがいなかったからね」
そんなつもりで言ったんじゃないと、本当はわかっている。
ミナちゃんは優しいし、そんな意地悪なことは言わないと。
「ミナちゃんが怪我で出られなかったから、私は一位が取れたんだよ」
「そんなのわからないよ」
「私はミナちゃんに勝つために、毎日雨の日も風の日も走った。だけど、私はいつもミナちゃんには勝てなかった。今年だって、ミナちゃんが出ていたら、私は二位だったよ」
私はそっとミナちゃんから視線をそらした。
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