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 僕はスマートフォンと改札前の時計を交互に眺めた。こんなに早く着く予定じゃなかったのに……。  時間は2時間ほど前に遡る。アラーム音がいつまで経っても鳴らないことが気がかりになって起き上がった。今日、彼女と会うのは9時からだったはず。ぼんやりとしたままスマートフォンを確かめる。  7:45の文字を見た瞬間、改めて覚醒した。もっと早く起きるはずだったのに。そして、ベッドから起き上がり準備を始める。洗顔や髭剃りを念入りにしたあと、とりあえずテレビをつけた。朝のニュース番組を見ながら服を着替えていった。テレビでは師走らしく『流行語大賞』についてのニュースが流れる。話題になった言葉が並んでいく中、見慣れない言葉が目に入った。 『ご飯論法』ってなんだ・・・・・・。一瞬、テレビに注目するが、すぐに次のニュースに変わってしまう。端の方にあるテレビの時計を見ると、まもなく8時になりそうになっていた。  最後に財布やらスマートフォンなどをポケットに仕舞い、出発しようとする。しかし、玄関にある姿見に自分が映ると、どうも気になってきた。この格好じゃ、友だちと呑みに行くみたいだな。自分の部屋に戻りパーカーを脱ぐと、代わりに襟のあるシャツとセーターを着る。そして、姿見の前に立ってみた。これでだいぶマシにはなっただろう。コートを羽織直し、家を出た。  再び時間を確認すると、8時過ぎ。僕が走って階段を降りていき、バス停へ向かうと丁度バスが止まっていた。走って向かおうとするものの、目の前で発車してしまう。間に合わなかったか……。僕は走った疲れからバス停に寄りかかっていると、発車したバスがすぐに止まった。そして、道の途中で扉が開く。もしかして、待ってくれているのか。その状況に甘んじてバスに乗り込んだ。電車も似たような感じでギリギリ乗ることができ、気がつけば待ち合わせの30分前には到着していた。
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