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 しかし、こんな早くに来てもな。改札口前にある柱にもたれ掛かり、スマートフォンを弄る。ふと、先ほどテレビで見たことを思い出した。ご飯論法って調べたら出るかな。試しに調べてみる。意図的に論点をすり替えること、質問を故意に狭義的に捉え答えること。その例に『ご飯』が用いられる。例を読んでもピンとは来ない。ぼんやり画面を眺めていると、スマートフォンに彼女から連絡が入る。 『おはよう。今、どこら辺にいる?』  その言葉と一緒に可愛らしいスタンプが送られてきた。もう集合場所に着いたなんて言ったら、気を使うだろう。でも、嘘はつきたくないし……。僕は考えながら返信する内容を打ち込んでいく。 『おはよう。電車には乗ったよ』  まぁ、嘘ではないだろう。内容を送信するとすぐに彼女から返信が来た。 『私も池袋駅は過ぎた』  彼女からの返信に一安心したあと、ふと彼女のアイコンが目に入った。名所で友だちと映っているキラキラした写真。髪型も化粧も流行っぽい、いかにも今時な彼女。なんで彼女が僕とデートなんて・・・・・・。  数合わせで来た合コン。慣れない状況にとても緊張していた。そうなると見慣れた物に手を出したくなる。そのとき、僕はテーブルの端っこで茄子の浅漬けを食べていた。そんなときに話しかけてきたのが、彼女だった。たわいもない話をしたあと、行きたい場所があると連絡を交換し、それで今日に至る。未だによく分からなかった。  そんなことを考えながら、改札口から彼女が出てくるのを待っていた。改札口の上にある時計からして、あと10分後くらいに来るだろう。そのとき、突然肩を叩かれた。振り向けば、そこにいたのは彼女だった。
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