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「ここ一回来てみたかったんだけど。誘える人なかなかいなくて」   「どうして?」 「だって、友だちは流行りとか見た目が可愛くないと乗ってくれないし。男の人はがっつり食べられるお店の方が好きそうだし」  そう言いながら唇を尖らせた。そういうことだったのか。それなら、尚更自分である理由が気になってくる。 「僕と一緒に来たのはなんで?」 「だって、茄子の浅漬け食べてたから。漬物美味しそうに食べる人は、和食好きだろうと思って」  そう語る彼女は満面の笑みを浮かべるが、話を聞いた僕は口が開きっぱなしだった。いや、一概には言えないだろう・・・・・・間違ってはないんだけど。彼女が喜んでくれるなら、いいか。微笑みに自分も和んでいると、今度は眉尻が下がる。 「あのね、本当は30分くらい前には着いてたんだよね。でも、なんか申し訳なくて」  彼女の言葉に声を漏らした。 「でも、さっきは『池袋駅は過ぎた』って」 「すでに電車には乗って来たわけだし。あながち嘘じゃないかなって」  自分も同じようなことをしたのに、彼女に言われると、妙に納得してしまう。 「実は僕も着いてたんだけど、誤魔化しちゃって」 「そうだったんだ・・・・・・なんだか、私たち似てるね」  その一言にだんだん顔が熱くなる。まだ冷えていた手で頬を押さえた。その間に定食が到着する。香ばしい匂いのする焼き魚、ワカメと豆腐が浮かぶ味噌汁、そして湯気が立つ真っ白いご飯。2人で、いただきます、と手を合わせる。ご飯を箸でつまむと、つやで輝いていた。口に入れ噛んでいくと、甘さが広がり身体が解れていく。隣の彼女も穏やかな顔つきになっていた。僕は白いページに思い出が刻まれていくのを感じながら、また白いご飯を食べていった。   おわり
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