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「ランバートとここにきた黒猫くんね。別荘地で見たんじゃないかしら? あいつもあの別荘地に別宅があったはずだし。特に隠してなかったでしょ?」
つまり、見ていたということか。何とも忌々しい。
今頃、チェルルはどうなっているのだろうか。無体な事をされていなければいいけれど、取り調べとなるとどうなんだか。我慢するから、それでも言いたくない事は言わないだろう。
怪我など、していないだろうか。辛い思いをしていないだろうか。早く、この腕に抱きたい。どうして無理に戻って来たんだ。危険なら、ハムレットのほうから国を出たのに。
思わず手に力が入った。とにかく現状をどうにかしなければ。
「あいつが私情を挟んで、声高に城の貴族達を先導しようとしている」
「今朝の事ね。物々しい捕り物だったもの、話は入ってるわ」
「取りもどす」
「取引を持ち込まれたっていう商人が何人かいるはずだから、リストを渡すわ。あんたが相手なら、もっと早く話を出すわよ」
「お前の兵隊に集めさせろ」
「強引ね。まぁ、仕方ないか。あんたに恩を売っておくのは今後の為になるわ」
ブラックが片手を上げると、丁寧に礼をしたユアンが下がっていく。コレで動き出すはずだ。
「欲しいのは奴が裁判に私情を挟んでいる事。更に言えば、うちに裏取引をさっさと持ち込んでくれれば奴の誠実さが崩れる」
「でも、事実は……」
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