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「分かってる」
相手の信用や誠実さを貶める事で黙らせ、火消しをする事は可能だ。だが、それでも事実は変わらない。帝国へのテロ行為や、カールへの暗殺未遂がある。最悪……
考えると、寒気がした。思わず自分を抱きしめたハムレットを見て、ブラックは苦笑した。
「騎士団の宰相さんも動いてるらしいわ。あんたがいないと裏の仕事も無秩序になってやりづらいのよ。頑張ってちょうだいな」
「分かっている」
絶対に取りもどす。それだけは絶対だと、ハムレットは睨み付けるように誓いを立てた。
翌日の午前中には、取引を持ち込まれたヒッテルスバッハ傘下の商人達が集まってきて話をしていった。それによると金での買収や国の優遇などをほのめかしたらしいが、どれも現実的な話まではしていないらしい。
当然だろう、ヒッテルスバッハに下る事は庇護も受けるが裏切りは死だ。それを知っている商人が、おいそれと話に乗ることはない。それだけ十分な生活も約束しているのだし。
「まぁ、予想通りくらいの情報ね。相手も大臣、大きくは出てこないか」
「確実な交渉ができるまでは現実的な事は提示しない。話が出ても『冗談です』と言い逃れが出来るレベルだ」
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