闇に生きる(ハムレット)

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 貴族の戯れ、ほんの冗談で真に受けるなんて思っていない。そんな様子が見える会話内容だ。  まぁ、だからこそ資金が焦げ付きこんな卑怯な方法を取ったのだろうが。  それにしても、チェルルをダシに使ったのは許せない。あの子は無理を承知で、それでも決死の覚悟で戻ってきたのに。  朝から何度目かの溜息をついたハムレットの元に、ユアンが控えめに戻ってきて来客を伝えたのは、丁度正午の事だった。  来客の人物は赤毛のおさげ髪にそばかすのある、ライトブラウンの瞳の少女だ。  だがその顔立ちは覚えがある。少女らしい佇まいと身のこなしではあるが、雰囲気には不遜さも見え隠れしている。ここだからあえて隠していないのだろうけれど。 「君にこの場所を教えた覚えはないんだけれどね、ラウル」 「ランバートに聞きました。僕が調べた事と宮中内部の事をお伝えしにきました、ハムレットさん」  声まで少女のようだが、口調などは緊張感がある。これが帝国暗府の主力の力。  そして、チェルルと同じほどの潜伏能力のある青年の力か。  すぐに一室を用意してラウルの話を聞くことになった。そして、予想以上の情報に目を丸くした。 「これ、奴の裏帳簿じゃないか!」     
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