ほんの僅かな逢瀬でも(ハムレット)

5/5
前へ
/60ページ
次へ
 黒いマントのようなコートを纏うハムレットはニヤリと笑う。そして、逃げようとする男の足を杖の部分を殴る。足を押さえて転がった奴は転がしたままに、次へと向かって行く。  三〇分もしたら、その場に立つのはハムレットだけとなり男達の呻き声が煩かった。 「さて、誰の差し金かな? なんて、今更聞くまでもないかもね」  側に転がっている男の腹を蹴って仰向けにしたハムレットは、その首筋にステッキの先を押し当てた。 「ギネスの差し金だよね?」  青い瞳が見下ろす。その冴え冴えとした光に怯えきった男は無言のままに頷いた。 「素直なのはいい事だね、これ以上痛い思いをしなくてすむ。それじゃ、後は騎士団に任せようかな」  スッと瞳を向ける先に人の気配がして、スッと消える。知っている気配だから、後はそこに任せる事にした。 「それにしても、僕まで監視付けるなんて酷いよね、団長さん」  呟くもののそう恨んだ様子もなく、ハムレットはコートの裾を翻す。そして、暗い王都を颯爽と歩き去ったのだった。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

354人が本棚に入れています
本棚に追加