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「確かにテロ行為はありましたが、それはやむにやまれぬ事情があってのこと。彼は主である現ジェームダル国王アルブレヒトを人質に取られ、キルヒアイスの命令に従わざるをえない状況にありました。行為自体、彼の意志ではありませぬ」
「今度はアルブレヒト王の命でこの国にスパイにきたに違いない」
「こんな分かりやすい潜伏などするか」
鼻白むような声でシウスをバカにするギネスに、シウスは呆れた様子で答えている。
やはり、一度失った信用を取りもどす事は難しいのか。どれだけ誠意を持って接しても、やった事は大きすぎる。国の王を、その王妃を殺そうとしたのだ。例え命令だとしても、事実は変わらないんだ。
「チェルル、お前は前ジェームダル国王キルヒアイスの命令でこの国に対するテロ行為を行っていた。そこに、間違いはないな」
「ありません」
「現国王アルブレヒトがもしも同じ事をお前に命じたとして、お前はそれに従うか」
「従いません。あの人がそんな事を俺に命じる事はないと思っていますし、例え命じられても俺は、もうこの国の人を傷つける事はできません」
「それは、何故だ?」
「……俺は本当なら、とっくに死んでいてもおかしくはない状況でした。アルブレヒト様も、助けられなかった。そんな俺に……俺達に情けを掛けてくれたのはこの国の王であり、戦い続けていた騎士団でした。その恩義を、俺はずっと感じています」
シウスが驚いた顔をしている。カールもニッコリと笑った。
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