黒猫の決意(チェルル)

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 ずっと、思っていたことだった。殺されたって文句の言えないチェルル達を助けてくれた甘い、情け深い人達にどんな形で恩を返せるのだろうか。 「それだけじゃない。別荘地でハムレット先生と往診をしている時、俺に優しくしてくれた人達がいます。ニコニコしながらお菓子をくれたり、声をかけてくれたり。とても許されない事をしたのに、俺の事を助けてくれた人もいます。そんな人達をもう、俺は裏切れない」  往診に行くと孫のように迎えてくれる老人達がいる。買い物に行く店の店主が、他愛ない会話をしておまけしてくれる。  とても許される事じゃないのに、エルの人達が最後には助けてくれた。そして、もういいと言ってくれた。  善人ばかりではないのは分かっている。でもチェルルは、側にあるこの笑顔を大事にしたい。大切なハムレットの側で、この人の輪の中で生きていきたくて戻ってきたのだから。 「口では何とでも言える!」  ギネスは高圧的に言う。確かに、それも間違いじゃない。口では何とでも言えるし、嘘つきな人間は多い。  では、どうしたら信じて貰えるのだろうか。どうしたらチェルルは危険ではないと、証明できるのだろう。言葉も心も疑われているのなら、目に見える形で危険を取り除く他にないんじゃないか。 「相応の罪を追わせるべきです!」 「彼は帝国への貢献もしております!」     
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